屋根の雪おろしの方法・手順について
屋根に沢山の雪が降り積もってしまうと、雪の重みで屋根に悪影響を及ぼす恐れが出てきます。だからこそ屋根の雪下ろしは重要になり、しっかりと雪下ろしのコツなどを抑えることが大切です。このページでは屋根の雪下ろしの方法などを紹介します。
作業の前に!本当に雪下ろしが必要かチェック
屋根の雪下ろし作業を始める前に、「本当に雪下ろしが必要な状況か?」を確認しておくことをおすすめします。地域によって違いはあるものの、雪下ろしが不要な状況もあるためです。
たとえば、北海道の建物は積雪にある程度耐えられるつくりになっています。また、屋根が雪下ろしをしない前提で作られているケースもあり、高所作業が非常に危険になる可能性もあります。
「今、雪下ろし作業が必要な状況か知りたい」という場合は、防災科学技術研究所が公開している「雪おろシグナル」などをチェックするのがおすすめ。雪おろシグナルでは、住んでいる地域の積雪の重さがわかるほか、雪の重さと危険度を色分けで知ることができます。また、既に雪下ろし作業をした日を入力することで、屋根にあるリアルタイムの雪の重さを知ることも可能です。
参照元:防災科学技術研究所︎|雪おろシグナル(https://xview.bosai.go.jp/products/snow-weight/)
参照元:|北海道科学大学|屋根の雪おろしは不要!?よくある注意喚起や雪おろしの危険性を知ろう(https://www.hus.ac.jp/hokukadai-jiten/detail/8d216609d6fb32cab9b62415d859fef3d51596c0-17713/)
雪下ろしの方法
雪下ろし作業は毎年のように死亡事故が発生するほど、非常にリスクの高い作業です。自分の身を守るためにも正しい手順で行う必要があります。ここでは一般的な屋根の雪下ろしの方法について紹介するので、ぜひチェックしてください。
- 動きやすく、防寒性の優れた服装を着用する。またヘルメット・命綱・墜落防止用器具・防寒性ゴム手袋・ゴム長くつなどの道具も装着し、準備を行います。
- ロープをスノーダンプやスコップにカルビナやフックで連結させます。できればエイトノックという結び方をしましょう。
- 梯子を屋根にかけ、他の作業者が屋根に上るのを見守るようにします。
- ロープを引っ張り、スノーダンプやスコップを引き上げます。さらに屋根アンカーを掘り出し、命綱をアンカーに引っ掛けます。
- 引き上げたスノーダンプやスコップからカルビナなどを外します。屋根の中央部から雪を滑らせるように除雪を実施。
- 次に身体を横向きに変え、両端にある雪をスノーダンプなどで屋根を滑らせるように除雪します。ただし屋根の下側には絶対に近づかないように注意してください。
- 綺麗に除雪しすぎてしまうと滑りやすくなるので、10~20㎝ほどの雪を残すようにしましょう。作業が終われば、スノーダンプやスコップをロープに結び付けて、屋根から降ろします。
- 命綱をアンカーから外し、屋根から梯子を使って、ゆっくりと降りてください。
参照元:有限会社 鈴文|雪下ろしマニュアル[PDF](https://www.suzubun.info/pdf/yukioroshi202010jp.pdf)
雪下ろしを検討する目安
雪下ろしが必要かどうかは、建物の構造・築年数・屋根の種類によって変わりますが、一般的には次のようなタイミングがひとつの目安になります。
- 非耐雪屋根(通常の木造住宅)の場合:屋根の積雪が概ね1m前後に達したら、雪下ろしを検討します。構造計算上も、1mを超える積雪は負担が大きいためです。
- 耐雪屋根(豪雪地向けに設計された屋根)の場合:設計上3m程度まで耐えられるケースもありますが、2.0〜2.5m程度を目安に雪下ろしを行うと安心です。
- 自治体の目安を確認:金沢市のように、築年数や軒の出の長さごとに「何cm積もったら雪下ろし」という一覧を公開している自治体もあります。お住まいの市区町村の「屋根 雪下ろし 目安」ページがあれば、必ず確認しましょう。
積雪の深さが目安より浅くても、次のサインがあれば早めの雪下ろしが必要です。
- 戸やサッシが急に開け閉めしづらくなった
- 家の中で「ミシミシ」「ギシギシ」というきしみ音が増えた
- 軒先にせり出した雪・大きな雪庇(せっぴ)ができている
これらは、建物に負荷がかかり始めているサインです。無理をせず、家族や業者、自治体の支援制度なども含めて対応を検討しましょう。
雪下ろしに使う道具は?
屋根の雪下ろしを行うためには、スコップ・雪庇切り・スノーダンプ・樋などの道具を活用します。
スコップ
丸形と四角い形があり、丸型は運べる雪の量は少ないですが、硬い雪には適しているといった特徴があります。四角い形は量もしっかりと運べるため、ほとんどの家庭では四角いスコップを活用しているようです。鉄・アルミ・プラスチックなどで作られており、プラスチックは軽いので使いやすいですが、硬い雪によって割れる恐れもあります。
雪庇切り
軒についている雪・つららを落とすための道具です。
スノーダンプ
プラスチック製のアイテムも増えており、軽量化も進んでいます。屋根の雪下ろしだけでなく、家周囲の除雪作業にも活用可能です。
樋
滑り台のような方法で雪を下すための道具です。樋を用いることで、狙った場所に雪を下すことができるでしょう。
雪庇・つららへの対処法
雪庇・つららを放置してしまうと、外気に触れることによって落下する危険性があります。もし人の頭の上に落下すれば、大きな被害を招く恐れがあるでしょう。だからこそ早めに対処することが大切です。
屋根の上から落とす方法
屋根の上でスコップなどを使い雪庇やつららを落とす方法があります。非常に効率的に取り除けるというメリットはありますが、どこまでが屋根なのかが難しく、落下する危険性は高い方法です。もし屋根の上で作業をするのであれば、屋根の位置を正確に把握する・周辺に人がいないかどうかを確認するようにし、慎重に作業を進めていきましょう。
地上から落とす方法
屋根の上で作業を行うとなれば、どうしても事故につながる恐れがあるため地上で作業をしたいと考える方も少なくありません。その場合には雪落とし棒を用いて、ひとつずつ丁寧に除去していきましょう。
屋根から落とした雪の除雪は?
屋根から落とした雪の除雪には、除雪機が用いられるケースが多々あります。除雪機を活用すれば、雪を簡単に遠方に吹き飛ばせるなどのメリットがあり、空き地などに溜めておく場所に運びやすくなるでしょう。ただ除雪機は取り扱い方によって事故につながる恐れもあるので、かならず取扱書の指示に従って使用することが大切です。
雪下ろし中に多い事故パターンと事前チェックリスト
国土交通省によると、屋根の雪下ろしなど除雪作業中の事故は、多雪の年には年間1,000件以上発生し、100人以上が亡くなる年もあります。死亡事故の約8割は65歳以上の高齢者です。
参照元:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chisei/kokudoseisaku_chisei_tk_000139.html)
実際に多い事故パターン
- 屋根・はしごからの転落:足元の雪や氷で滑って落ちるパターン。命綱を付けていない、自立しないはしごを使っているなどのケースが多く見られます。
- 落雪・落氷による直撃:作業中に屋根の雪やつららが一度に落下し、作業者や通行人に当たる事故。
- 除雪機への巻き込まれ:詰まった雪を手で取ろうとして指を挟む、服が巻き込まれるなどの事故。
- 体調悪化:長時間の重労働や寒さによる心臓発作・脳卒中など。
作業前に必ず確認したいチェックリスト
- 一人で作業していないか?
必ず複数人で行い、屋根に上る人と下で見守る人を分けましょう。 - 安全装備は揃っているか?
ヘルメット・命綱・安全帯・滑り止め付き長靴・防寒性のある手袋・動きやすい服装を用意します。 - 命綱の固定先は十分に強いか?
母屋の梁や専用アンカーなど、しっかりした構造体に固定し、手すりや雨樋など強度の低い部分には絶対に結ばないようにします。 - 天候・時間帯は安全か?
吹雪や強風、視界の悪い時間帯は避け、日中の明るい時間に作業します。 - 屋根の下に人や車がいないか?
作業前にロープ・コーンなどで立ち入り禁止の範囲を決め、家族や近所にも声をかけておきましょう。 - 体調に不安はないか?
風邪気味・持病・睡眠不足がある場合は無理をせず、家族や業者に依頼することも検討しましょう。
これらを一つずつ確認し、ひとつでも不安があれば「今日はやめる」「業者に頼む」判断も大切です。
自分での雪下ろしが不安なときは業者への依頼も選択肢に
屋根が高い・勾配が急・高齢世帯など、自分での作業が危険なケースでは、専門の雪下ろし業者への依頼も検討しましょう。自治体によっては、建設業協会や建築組合など、雪下ろしに対応可能な業者リストを紹介しているところもあります。
業者に依頼した方がよい具体的なケース
- 2階建て以上で、はしごをかけるだけでも怖い高さがある
- 屋根の勾配が急で、雪が滑りやすい金属屋根になっている
- 一人暮らし・高齢世帯などで見守り役が確保できない
- 短時間で広い面積の雪下ろしが必要(店舗・アパート・事務所など)
問い合わせ〜依頼までの流れ
- 自治体やインターネットで候補業者を3社ほどピックアップ
「(地域名) 雪下ろし 業者」「屋根 雪下ろし 料金」などで検索し、地元に根ざした業者を探します。 - 電話やメールで次の情報を伝えて見積もり依頼
- 住所(だいたいの場所)
- 建物の階数・屋根の形状(片流れ・切妻・陸屋根など)
- 現在のおおよその積雪の高さ
- 作業してほしい範囲(屋根全体/片側のみ など)
- 作業内容と料金を比較
「作業員◯名で◯時間程度」「屋根の上だけ/落とした雪の片付けまで含むか」「出張費の有無」「キャンセル料の有無」などを確認し、総額で比較します。 - 作業当日の安全対策も確認
事前に「ヘルメット・命綱・安全帯などの安全装備は使っていますか?」「賠償責任保険には加入していますか?」と聞いておくと安心です。
悪質業者を避けるポイント
- 突然の訪問で「今すぐやらないと危険」と不安をあおる業者は避ける
- 相場から大きくかけ離れた高額な料金を口頭だけで提示してくる業者は契約しない
- 見積書や作業内容を書面・メールで残すように依頼する
不安な場合は、自治体や消費生活センターに相談し、過去のトラブル事例や注意喚起情報も確認しておきましょう。
雪下ろしの回数を減らすための具体的な対策
毎年のように屋根の雪下ろしが必要だと、体力的にも経済的にも大きな負担になります。将来のリフォームや建て替えの際には、次のような雪対策を検討することで、雪下ろしの頻度を減らすことができます。
雪止め金具・雪止めフェンスの設置
雪止め金具は、屋根に積もった雪が一気に滑り落ちるのを防ぐ金具です。雪の落下スピードや塊を抑えることで、落雪による人や車への被害を軽減できます。後付けで設置できるタイプも多く、既存の屋根にも対応可能です。
- 人がよく通る玄関前・車庫前の上の屋根に優先的に設置する。
- 既に雪止めが1列だけの場合、2列に増設して落雪をさらに抑える。
- 設置は屋根工事業者に依頼し、屋根材に合った金具を選ぶ。
屋根融雪システムの導入
電熱線や温水パイプを屋根の上や内部に設置し、電気やボイラーの熱で雪を溶かす「屋根融雪システム」もあります。初期費用と光熱費はかかりますが、こまめな雪下ろしが不要になり、高齢者世帯や店舗などで採用されています。
- 屋根全面ではなく、玄関上や道路側など必要な部分だけに設置する方法もある。
- ブレーカー容量・ボイラー容量など設備側の確認が必要。
- 雪が解けた水の排水経路(樋や排水管)も合わせて整備する。
断熱・気密の強化による「すが漏り」対策
天井断熱や屋根断熱を強化し、室内の熱が屋根裏に逃げにくくすると、屋根の一部だけが溶けて再凍結する「すが漏り」や大きなつららの発生を抑えやすくなります。断熱改修は暖房費の削減にもつながるため、長期的な視点で検討されるケースが増えています。
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