除雪機の正しい使い方
除雪機の正しい使い方ついて解説します。除雪機は大きな事故につながる可能性もある機械なので、基本の正しい使い方をしっかり押さえて安全に作業するようにしましょう。
ここでは除雪機を使用する際の注意点やポイントについてまとめているので、特に初心者は参考にしてください。
除雪機の取り扱いで注意したいこと
消費者庁の消費者安全調査委員会から、除雪機についての注意点が出されています。安全装置のデッドマンクラッチによる事故が増えているということなので気を付けましょう。
- 定期点検を行いましょう。特に安全装置が正常に動作するか確認しましょう。
- 安全装置であるデッドマンクラッチをひもで縛る等、固定して無効化すると大変危険です。絶対に無効化して使用しないようにしましょう。
- エンジンをかけたまま、投雪口やオーガに手を近づけないようにしましょう。雪が詰まった場合は、エンジンを止めて雪かき棒を使用しましょう。
- 除雪中だけでなく、移動中や収納中にも気を付けましょう。特に後進時はより注意しましょう。
【除雪機の作動時には細心の注意を!】除雪機の使用前には定期点検をしましょう。また、デッドマンクラッチをひもなどで固定して安全装置が作動しない状態で使用すると、転倒などの際に除雪機が停止せず、ひかれるおそれがあるため、絶対にやめましょう。詳細⇒https://t.co/Kvj8UcUq7K pic.twitter.com/5ufnyf8IyL
— 消費者庁 (@caa_shohishacho) December 5, 2018
除雪機で事故発生はどれくらい起きているの?
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の報告によると、冬のシーズンで除雪機での死亡事故が発生しています。2011~2020年度の1オ年間で除雪機によって負傷した事故は40件にもおよび、40件のうち死亡事故は25件も発生している状況です。とくに2020年度は過去10年間で最も事故が多く発生しており、2020年度だけで死亡事故が7件も起こっています。そのためNITEでは除雪機による事故を防ぐための注意喚起も行っており、除雪機による事故を防ぐようにしましょう。
引用元:独立行政法人製品評価技術基盤機構( https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2021fy/prs211223.html)
除雪機事故の事例
除雪機で事故を起こすことはない!と思っている方も多いでしょう。しかし現実に事故は発生しています。具体的にどのような事故が起こっているのか事例を紹介するので、除雪機を使用する際に類似した事故を起こさないよう注意してください。
2020年12月 オーガに巻き込まれて足負傷
事故詳細
長野県にて歩行型の除雪機を使用した際、回転部分のオーガに巻き込まれ、足を負傷した事例です。使用者は除雪機のエンジンをかけたままオーガクラッチをオフにした状態で、オーガ部に移動した際、足を巻き込まれたとのこと。除雪機事態には特段の不具合は認められず、使用方法に問題があったと考えられています。
事故が起こった原因
この除雪機はオーガクラッチレバーを完全にオフで操作した場合、通常は3~5秒でオーガが停止する設定になっていましたが、ブレーキワイヤーが何らかの要因で劣化している際はオーガが停止するのに遅延が生じてしまう仕組みでした。警察が検分したところ、オーガクラッチをオフにすれば、オーガは停止し、とくに不具合は認められないと判断。
使用者が体のバランスを崩した際、オーガに足を巻き込まれたため負傷したと推定されます。
注意するべきポイント
除雪機を使用するうえで注意しなければならないポイントは、オーガに近づく際には完全に停止しているかどうかをチェックすることです。動いている状態で近づいてしまえば、何らかの理由で接してしまえば大事故につながる可能性があります。
この除雪機の取り扱い説明書にも「回転部分に手を触れる際はエンジンを停止し、エンジンキーを外す」といった注意点が記載されています。そのためエンジンをかけたまま移動するのではなく、エンジンを停止させ、エンジンキーを外したうえで移動することが大切です。
引用元:独立行政法人製品評価技術基盤機構( https://www.nite.go.jp/jiko/jiko-db/accident/search/?m=jiko&a=page_detail&id=A202000798)
2020年12月 右手指を負傷
事故詳細
新潟県にある事業所で使用者が除雪機を使用している際、排雪口に雪が詰まり、それを取り除こうとした際に右手指を負傷した事例です。事故が発生したとき、オーガやブロワが回転しているかどうかを確認せず、停止していると思い込み、排雪口に手を入れてしまい、ブロワに手が巻き込まれてしまったとのこと。
事故が起こった原因
走行クラッチレバーがオンの状態で、除雪クラッチレバーをオンにすることでオーガとブロワの回転が発生し、どちらかのレバーをオフにすることで回転が停止するタイプの除雪機でした。事故発生時にエンジンは停止しておらず、クラッチレバーはオフの状態。 この事故の原因として考えられるのは、使用者が排雪口に詰まった雪を直接手で除去したため負傷したと推定されます。また適切なメンテナンスを行っていなかった点も事故の要因になった可能性が高いと考えられるでしょう。
注意するべきポイント
最も注意したい点が排雪口に雪や異物が詰まったときは、決して直接手で触れないということです。しっかりとエンジンを停止させ、オーガとブロワの回転が停止しているか確認したうえで、備え付けの雪かき棒を活用しましょう。
また除雪機は精密な機械なので、定期的にメンテナンスしなければ不具合が起こりやすくなります。そのため定期的に異常がないかを点検し、安全に使用できる状態かどうかチェックしましょう。
引用元:独立行政法人製品評価技術基盤機構( https://www.nite.go.jp/jiko/jiko-db/accident/search/?m=jiko&a=page_detail&id=A202000734)
2020年2月 オーガに巻き込まれて死亡
事故詳細
北海道にて使用者が除雪機のオーガに巻き込まれた状態で死亡した事例です。発見当時、エンジンキーはオンになっており、変則レバーは中立の位置にあり、デッドマンクラッチがオンになった状態でした。また走行クラッチレバーは、ロープ状のもので固定されており、使用者が何らかの要因で回転しているオーガに近づき事故に遭ったと推定されます。
事故が起こった原因
エンジンをかけたまま、かつ走行クラッチレバーがオフにならないよう固定、除雪クラッチレバーをオン、エンジン回転レバーを最低速の位置にした状態で、回転している前方のオーガに近づいたことが原因と考えられます。
注意するべきポイント
事故を招いた除雪機の取扱説明書にも「回転中は除雪部に近づかない」「回転部に手・足・顔を近づけない」「近づく際はエンジンを停止する、「点検する際は各クラッチをオフにし、エンジンを停止した状態で行う」と記載されています。除雪機は使い方を間違えれば、重大な事故を引き起こしてしまうリスクが高いです。そのため説明書に記載されている注意事項はしっかり確認し、間違った使い方をしないようにしてください。
引用元:独立行政法人製品評価技術基盤機構( https://www.nite.go.jp/jiko/jiko-db/accident/search/?m=jiko&a=page_detail&id=A201901230)
2019年2月 除雪機の下敷きになって死亡
事故詳細
新潟県にて80歳代の方が除雪機を使用している際、除雪機の下敷きになった状態で発見され死亡した事例です。発見時エンジンは掛かっており、オーガは回転している状況だったとのこと。使用者は仰向けで、右クローラに左肩から右足にかけて下敷きとなっていました。走行クラッチはオン、かつ高速側の後進位置にあり、クローラは駆動状態の状況の事故です。
事故が起こった原因
事故を発生した際に使われた除雪機はデッドマンクラッチが備わっていないタイプでしたが、引抜式の非常停止スイッチが搭載されていました。しかし使用者は引抜式非常停止スイッチのヒモを身体につけておらず、除雪機を後進中に転倒した際も非常停止装置が働かなかったために事故が発生したと推定されます。
注意するべきポイント
引抜式非常停止スイッチが搭載されているタイプの除雪機であれば、必ずスイッチのキャップを本体に取り付け、一方のヒモを使用者の体に巻き付けてから除雪作業を行わなければなりません。安易に大丈夫と判断せず、しっかりと使用方法を遵守することが大切です。またデッドマンクラッチが搭載された除雪機の方が、より安心感はあるでしょう。
引用元:独立行政法人製品評価技術基盤機構( https://www.nite.go.jp/jiko/jiko-db/accident/search/?m=jiko&a=page_detail&id=A201800718)
2016年2月 小屋の柵と除雪機に挟まれ死亡
事故詳細
使用者が除雪機を保管場所に収納する際、前後進を繰り返し方向転換しているときに除雪機と小屋の柵に挟まれ、病院に搬送されたものの死亡が確認された事例です。使用者は走行クラッチレバー上にかぶさった状態で発見されています。
事故が起こった原因
使用者の体がクラッチレバー上にあったため、走行クラッチレバーがオンのまま固定されてしまい、上部にある緊急停止バーが押されたとしても、走行クラッチレバーがオフに移動できない状況が原因だと考えられます。
注意するべきポイント
この除雪機の取扱説明書には、後進時には足下・後方を確認し、十分に注意したうえで走行スピードを減速し運転する旨が記載されています。何度も方向転換を繰り返すことで、操作ミスも起こりやすい状況になってしまうので注意が必要です。速度や周辺状況などを鑑みて、慎重に操作するように心がけましょう。
引用元:独立行政法人製品評価技術基盤機構( https://www.nite.go.jp/jiko/jiko-db/accident/search/?m=jiko&a=page_detail&id=A201500785)
除雪機に備わっている安全機能
除雪機には様々な安全機能が搭載されています。商品によって搭載されている安全機能が異なるため、しっかりと取扱説明書を確認してください。どのような安全機能があるのか見ていきましょう。
デッドマンクラッチ
デッドマンクラッチとは使用者がクラッチレバーから手を離した場合、走行かつ回転部分が自動的に停止する安全機能です。使用者が何らかの理由で手を離した際に自動停止することで、事故を予防することができるでしょう。2004年4月より除雪機安全協議会において協議会に加盟したメーカーの歩行型除雪機にデッドマンクラッチの搭載を義務化しています。
緊急停止クリップ、緊急停止ボタン、緊急停止バー
使用者の体に取り付け、使用者が除雪機から離れた際にコードが外れるとエンジンが停止する安全機能を「緊急停止クリップ」と呼びます。使用者が転倒した場合や除雪機から離れて稼働するのを防ぐための装置です。
「緊急停止ボタン」はボタン、「緊急停止バー」はバーを押すと機械が停止する安全機能。ハンドル付近にあるタイプや足元にあるタイプがあります。
除雪作業の前にはここをチェック!
障害物があればとり除いておく
雪の上に石や木の枝などの障害物があれば、あらかじめ取り除いておきましょう。作業中、除雪機に巻き込まれて故障の原因になってしまうことも。また周辺に飛ばされることもあるので、できるだけきれいな状態の場所で除雪作業を行うことが安全のポイントです。
使用前に作動するかチェックする
とくにシーズン初めて使う場合には、しっかりと安全に作動するかチェックしておきましょう。何らかの不具合が発生していれば、安全に使用することが出来ません。雪かき棒はあるか、安全装置は作動するか、作業灯は点灯するかなどをチェックしてください。
回転刃やシューター部分も念入りにチェック
使用前に回転刃やシューター部分にゴミ・異物がないかを確認しましょう。異物を巻き込んだままにしておけば、除雪機の故障にもつながるので注意してください。
除雪の際の服装や天気も気にする
除雪作業を行う際、実は服装も非常に大切です。
- インナー: 保水力・速乾性に優れた生地が最適です。ポリエステルやナイロンなどがオススメで、保湿力にも優れています。
- 上半身: 寒さを防げるものであれば、何でも構いません。ただ動きやすい服装を意識しましょう。
- ズボン: 防水のタイプを履きましょう。
- 靴・手袋: 防水タイプで、滑りにくい長靴が最適です。手袋も防水タイプが良いでしょう。
人がいないことを確認
まわりに人がいるときは除雪機を使わないようにしましょう。また作業中は絶対に人を近づかせないようにすることも大切。 特に小さいお子さんについては十分注意してあげましょう。
エンジン始動時は低速から
除雪作業を開始する際のエンジン始動についても注意しましょう。
速度調整レバーは低速からスタートすることが大切です。いきなり高速から作業してしまうと、エンジンが暖まっていないため思わぬ故障を引き起こすことも考えられます。エンジンスタート後は徐々に作業速度を上げていきましょう。
除雪作業中の注意点
後進と雪詰まりには気を付ける
前進するだけでなく、後進することも多い除雪機。後進するときは、足もとや後方の障害物に十分気をつけましょう。また必要に応じて、ソリの位置を調整することも作業を効率的に行うポイント。
除雪は雪が機械に詰まることも多い作業です。雪詰まりを取り除くときは、エンジンを止め、必ず雪かき棒などを使って取り除くことが大切。エンジンをかけたまま離れるのは事故の原因になるため厳禁です。
重い雪は速度を落として
深い雪や重い雪の除雪時には、エンジン回転が落ちる場合があります。こんな場合は、エンジン回転が回復するまで速度調整レバーを低速にしておきましょう。除雪部の雪がなくなり、エンジン回転が回復したら再び元のスピードで前進します。
硬い雪は除雪幅の調節と
前・後進の繰り返し
深い雪や硬くなった雪でエンジン回転が落ちる場合は、除雪部にかかる雪幅を狭くすることによりスムーズに除雪することができます。また、かなり硬い雪では除雪部が乗り上げる場合もあります。こんな時は、前・後進を繰り返して除雪を行えば、きれいに平らに仕上がります。
積雪量が多い時には段切り除雪を
積雪量が多く、除雪部よりも雪が多い場合などは段階的に除雪を行うことがポイントです。
のぼる時は、オーガの高さを調整して除雪部を少し上げます。また雪にくいこませる時もオーガの高さを調整して除雪部を少し上げます。さらに必要に応じて、ソリの位置を調整するとスムーズに作業することができます。
安全装置のデッドマンクラッチを無効化しない
デッドマンクラッチの無効化により、オーガに巻き込まれる事故が増えています。デッドマンクラッチとは、ハンドルのクラッチレバーから手を離すと機械が止まる安全装置です。しかし、これが装備されていてもレバーをひもで固定をするなどして、安全装置を作動しない状態にして使用した場合、転倒などの際に除雪機が止まらず、除雪機の下敷きになったり、巻き込まれたりします。正しい使い方で、除雪機を使用することが自身の命を守ることにつながります。
投雪方向に注意
除雪機のなかには、投雪距離が長い機種もあるので、最初は近くに雪を飛ばして、様子を見ながら少しずつ距離を長くしていくようにしましょう。また、オーガに石が巻き込まれた場合、雪の数倍の距離が出てしまうため、予期せぬ事故が発生するリスクが高まります。
また、安全に除雪作業を続けるためには、雪投距離だけでなく、シューターからの投雪方向にも充分な注意を払うことが求められます。人や建物、車などに当たることのないようシューターの角度を調節し、周囲に注意しつつ除雪作業を行っていきましょう。
斜面を横切って使用しない
斜面を横切るようにして除雪作業を行うと、横滑りしたり転倒したりする可能性が高まり、とても危険です。また、滑りやすい雪の上ですから、必ず低速で除雪機を運転するようにしてください。
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